歯の痛みー歯以外の原因、歯の原因の場合
歯はどうして痛くなる?
こんにちは京都市伏見区京阪桃山南口の仁科歯科医院の仁科真吾です。
歯の痛みを繰り返すというあなた
強烈な歯の痛みを経 験したら,
もう二度と経験したくないと思いませんか?
歯が痛むといって歯科医院に来院される方でも,
歯が本当に原因の人もい れば,
歯が原因でない場合もあります。
ここでは歯の痛み,
歯のまわりの痛みに関して,
歯が原因のものと歯が原 因でないものに分けて,
それぞれの原因や対処法を説明します。
歯が原因の歯の痛み,歯のまわりの痛み
歯の痛みを,発生している場所によって分類すると,
象牙質(ぞうげし つ),
歯髄(しずい),
歯根膜(しこんまく),
歯肉(しにく),
歯槽粘膜(しそうねんまく)の痛みなどとなります。
原因というと,
齲蝕(むし歯)および根尖性歯周炎(歯の根の先までばい菌が及び炎症を起こしたもの)によるもの,
歯周疾患(辺縁性歯周炎:歯槽膿漏:歯のまわりの病 気)によるもの,
歯が割れたりあごの骨の骨折といった外傷によるところ が主なものです。
以下に歯が原因の歯の痛み,歯のまわりの痛みとその原因を解説します。
歯の痛み
象牙質(ぞうげしつ)の痛み
歯の硬組織(体の構造で硬い部分)において痛みを感じるところは,
エナメル質(人体で最も硬い組織)の内側にある象牙質です。
象牙質は硬組織にもかかわらず,
象牙細管という管があり,そこから歯の中心の歯髄の神経が刺激され痛みが生じます。
象牙質の痛みは,外からの刺激によって生じる2-3秒以内の鋭い深い痛み です。
外からの刺激とは,
熱刺激ー冷たいものを食べたズキッと痛む,
化学的刺激ーチョコのような甘いものを食べた時にズキッと痛む
機械的刺激ー食事をしたらズキッと痛んだ
これは歯髄中の神経が知覚過敏という炎症を起こしている状態の歯に,日常ではごく当たり前の刺激が加わるこ とで痛みが発生することが問題となります。
この痛みは,はっきりと場所を示すのが難しく,問題のある歯の周囲に痛みを感じます。
痛む場所に関して,上下の歯を間違えてしまうことも多くあります。
象牙質の痛みは,知覚が過敏と思われる歯の周辺の歯に対して,
1本 ずつ刺激を与えて検査していくことで診断し,問題のある歯が確定さ れます。 最も頻繁に認められる原因は象牙質の齲蝕ですが,これは見て確認し,さ らに器具で触って痛みが誘発され,レントゲン診査も含めて診断します 。
痛みは,むし歯に対する詰め物の不適合や,歯が削れたり,エナメル質が 溶けたり,また歯肉が下がって象牙質が口腔内への出てくることも原因と なります。
これらの場合,鋭い探針で疑わしい部位を触ることによって痛 みの場所を明確にすることができます。
象牙質のむし歯によって痛みが出ている場合には,一旦鎮静処置を行い、詰め物を詰めて治します。
歯と歯肉の境界にある歯根(しこん:歯の根っこ)の象牙質が,歯肉が下 がることによって露出し,生じる知覚過敏は,対処法が様々です。
まずは歯根面を清掃し汚れを付着させないことで歯茎が下がらないようにすることが重要です。
さらに露出歯根面からの刺激の入力を防止するために歯根面を被覆するこ とで対応します。
歯髄(歯の神経)の痛み
歯が原因の歯の痛み,歯のまわりの痛みの中で,最も痛みの強いのは歯髄の痛みです。歯の神経には多くの神経,血管が走行しています。
ここに炎症性の痛みが生じる原因と しては,むし歯が歯髄に達した場合、や歯の破折が あり,さらに噛む力などが加わることにより硬い組織の欠損 がないにもかかわらず痛みが生じることもあります。
歯髄の病気に伴う痛みは,
ズキズキとした心臓の音と同じリズムで起こる痛みです。
体を温めたり、横になったりした時痛みは増します。
一旦痛みが増強されると数十分間は継続します。
象牙質の痛みと同様に,自分で痛む場所を明確に示すのは困難です。
痛みは耳,頭,頬などに広がります。
この広がりは痛みの強度が増すと,
さらにその傾向が強くなりま す。
痛みの症状は持続性の鈍い痛みは周期的に変化し,さらに 自発的にあるいは外からの刺激が加わることで悪化します。
患者さんは痛 みによって眠れないことも多いです。
歯髄の炎症に伴う痛 みは,数週間や数ヶ月といった長期間継続するものではなく,数時間から 数日間で自然と治まります。
診断は痛みのある歯の特定を行い,
その後,処置方針の決定のために
歯髄の状態を評価します。
歯の特定は,象牙質の痛みの項で述べたものと 同様です。
歯を軽く叩いてみることも歯の特定と炎症が 歯髄全体に及んだかどうかの指標となります。
歯髄の状態は複数の診査結果から診断します。
治療は麻酔下にて歯髄を保存して沈静させるか,あるいは歯髄を除去しま す。
除去した場合はその後の根の治療が必要となります。歯髄の痛みは, 歯髄除去後直ちに消失します。
歯のまわり(歯周組織)の痛み
歯のまわりからの痛みは比較的容易にその場所を明らかにできます。
問題 のある歯は軽く叩くことで診断できます。
歯のま わりの痛みは通常,細菌の感染による歯肉,歯根膜,歯槽骨(歯を支える骨の部分)の急な炎症の過程で生じます。
これには2通りの原因が考えられます。
一つは歯髄の炎症から歯髄が死んでしまい,その後歯根(歯の根)の 先端に炎症を引き起こすものです。
もう一つは歯肉と歯周組織の感染によ り,歯周ポケットを形成し,歯の辺縁に炎症を引き起こすものです。
痛み の特徴,局所および疼痛を生じる状況は類似していますが治療は異なります。
根尖性歯周炎(歯の根の先の炎症)の痛み
急性の根尖性歯周炎による痛みは,
ズキズキと持続する痛み です。
痛みは歯を咬み合わせるとより痛み,
さらに進行した場合,その歯に軽 く接触しただけでも痛みが強くなります。
これらの場合,その歯はかみ合う歯との接触に関して敏感になります。
患者は根尖性歯周炎の前には歯髄炎の痛みを経験することがあります。
そしてそ の後は軽度な持続的な痛みへと移行します。
根の先からの痛みの場所は, 通常,問題のある歯を正確に示すことができます。
この点では,象牙質や 歯髄の疼痛とは異なります。根尖性歯周炎はあごの骨に広がります。
問題のある歯は,軽く叩くことによ
って容易に判定できます。
さらにその歯の根の先あたりの粘膜は,押すと痛みがあります。
通常,歯髄(歯の中心の神経)は死んで化膿しています
温度変化や電気による診査に反応しま
せん。
歯の内部の炎症と急性の根の先の炎症を明確に区別することはできません。さらにそれらの痛みは同時に生じることが多 くあります。
さらに炎症が進行し重症になると,
顔面の腫 脹を伴い,さらに発熱や悪寒を生じることもあります。
通常腫脹(はれ) が生じた場合,炎症に伴う膿みは骨から軟かい組織へと移行することで圧 が減じ,それに伴い痛みも減少します。
根尖性歯周炎の初期においては,炎症が根尖周囲に波及して間もないため,まだレントゲン所見上で明確に診断することは困難です。
もし,レントゲン上で根尖周囲に透過像が認められたならば,
慢性の根尖性歯周炎と 診断するべきです。
多くの場合,レントゲン画像上での根尖周囲の透過像 は,症状がなくても認めますレントゲン所見は痛みを表すもの ではなく,さらに痛みは根尖周囲の病変の状態や感染の有無とも関係がありません。
痛みが根尖性歯周炎からきている場合,その感染の原因は通常歯髄のあった場所(根管)からきています。
治療の初期の目的は, 感染の原因を除去することです。
歯髄のはいっていた空洞を開放し,清掃 します。
噛み合わせが当たらないようにすることは痛みを和らげるこ とに効果的です。
もし,腫脹(ハレ),発熱,悪寒があるなら,抗生物質、消炎鎮痛剤の処方を行います。
根尖周囲に膿の袋ができ,内圧が高まって痛みが生じて いる場合,切開して膿を出します。
痛みは通常1-2日で軽 減されます。
辺縁性歯周炎(歯の周囲の炎症)の痛み
辺縁性歯周炎の痛みは急性の根尖性歯周炎の痛みと大変類似しています。
痛みは持続的であり,歯が当たることで痛みはまします。
目に見える歯肉の腫脹と発赤で特徴づけられ,根尖性歯周炎に比 較して歯肉よりにあります。
その歯は打診に敏感で,動揺している場合もあります。
より炎症が進んだ場合、 炎症性の腫脹,発熱,を伴うこともあります。
深い歯周ポケット(歯 と歯ぐきの間の溝)が通常歯の周りに存在し,歯周ポケットの診査が必要 です。歯周ポケットからの排膿があれば,痛みは軽減します。
歯髄は通 常,生きており温度変化や電気刺激に正常な反応を示しますが,場合によ っては知覚過敏を起こすこともあり,また辺縁から逆行性に歯髄炎を引き 起こすこともあります。
膿袋の増大は通常歯周ポケットからの排膿が 出ないことにより起こり,
深い骨の下まで至るポケットは,歯根の又 の部分の病変の存在と関連しています。
治療は消毒と歯周ポケット内部の除菌が行われます。
上下の歯が当たらないようにします。
腫脹,発熱,悪寒があるなら消炎鎮痛剤、抗生物質の投薬を行います。
歯周ポケットから排膿がしていなければ、切開による排膿を行います。痛みは治療後徐々に治まります。
歯肉の痛み
辺縁性歯周炎によるものを除くと,歯肉の痛みは異常な機械的刺激により 歯周ポケットに生じる急性の炎症によって生じます。
食べ物が詰まって痛みがある場合。
食事の後に歯と歯の間に痛みを訴えます。
痛みは圧迫感を伴い,不快感があります。
歯科医師が歯間部の食片をとり除けばただちに消失します。
診査では食片 圧入を起こす歯と歯の間の接触関係を調べます。
歯と歯の間の歯肉は過敏 になっており触っただけで出血します。
食片圧入部位に隣接した歯は,通常軽く 叩いても痛みがあります。
隣り合った歯の接触関係は,むし歯によって問 題が生じることが多いですが,治療によって歯と歯の間の接触関係を改善 することで消失します。
智歯周囲炎(親知らずの歯の炎症) 下の顎の最後方に強烈な痛みを生じます。
重篤な場合,飲み込みによ って痛みが強くなることや,口が開 かなくなることもあります。
急性の 智歯周囲炎は,通常親知らずを覆う清掃不良が原因のことが多いです。
歯肉は急性の炎症があり, 腫れています。
また反対側の歯が腫 れた歯肉に当たることもあります。
発熱と悪寒がある場合は,感染が生じていると考えられます。
治療は,
清掃不良部を消毒し,
かみあわせによる外傷を除 去します。
発熱と悪寒や口が開かない場合には,切開し抗生物質、消炎鎮痛剤の投与を行います。
歯槽粘膜の痛み
歯槽粘膜における痛みは,
潰瘍(かいよう)を生じる疾患 に関連しています。
口腔内全般に生じる痛みは,広範囲な感染によ るものや,全身疾患にともなうものが多くあります。
部分的な痛みは機械的,化学的外傷や熱傷,ウイルスの感染等によって生 じます。
痛みは刺激的な食事の時に起こります。 痛みは数分で緩解します。
口内炎について説明します。
口内炎は自己免疫によるといわ れ,ストレスによって悪化します。
潰瘍形成までの2-48時間前には灼熱感 があります。
病変は0.3-1.0 cmと小さいですが,
強く痛みます。軽いもの では10日以内に治癒します。
より重篤な場合,深い複数の潰瘍が形成され,極めて痛みが強く,発音や食事に困難 が伴います。
この場合1ヶ月ほど治癒に要することもあります。
治療は,レーザーによる治療、もしくは軟膏の塗布を行います。
口腔粘膜に全体的な疼痛が起きる時は,
灼熱感であり,味覚障害や金 属味を伴います。
この痛みは,細菌や真菌の感染から起こるものが多いで す。
カンジダ性口 内炎は,長期に渡る抗真菌剤の投与や免疫能の異常を原因として疑いま す。
頭頚部への放射線療法は,口腔内全体の急性の粘膜炎を生じることが あります。
また唾液分泌の減少は口腔粘膜の慢性痛や不快感を生じます。
口腔粘膜の灼熱感,特に舌の灼熱感は,貧血のような全身疾患によって生 じます。
これらは通常,舌の表面の形の変化を伴います。
しかしながら, 口腔内や舌に灼熱感を訴える50-70才の女性において,口腔内に原因とな る変化を認めないことがあり,これらは舌痛症を呼ばれ,神経学的,ある いは心身医学的対処が必要となる場合があります。
非歯原性歯痛(歯が原因でない歯の痛み)
歯の痛みに関して,これまでの歯科的な対応では解決できず,原因不明の まま長期間の治療経過をたどっている症例が存在することが報告されてい ます。
歯が原因 でない歯の痛みは,歯自体が痛いものもあれば歯肉や歯のまわりの組織が 痛いと訴える場合もあります。
どちらにせよ原因は歯以外にあり治療の対 象も歯ではありません。
咀嚼筋の痛みによる歯痛
頭や首に起きるすべての深い場所の痛みは,歯の痛みとして感じてしまう 可能性がありますが,そのなかでも,咬むための筋からの痛みの場合が最 も多くあります。
咬筋(下あごのとこ ろから頬骨にかけての筋)が原因の,下の奥歯の痛みと,側頭筋が原因の,上の奥歯へ の痛みが高頻度に認められます。
痛みは持続的であり,筋の圧 迫することでで,歯の痛みを再現します。
さらにすなわち痛いと感じてい る歯への麻酔で痛みがとれないにもかかわらず,筋への麻酔によって歯の 痛みが減弱されることで確定されます。
神経障害性の歯痛
三叉神経痛(さんさしんけいつう)による歯痛
繰り返し発作が起きる神経痛の一つである三叉神経痛は,歯を触ることで 発作が起きたり,あるいは発作の痛みが歯に広がったりする場合がありま す。
いずれの場合でも,突発的で,鋭く,自発性の痛みとして特徴づけら れる発作的な神経痛の痛みです。
帯状疱疹による歯痛
帯状疱疹は,感染した神経の分布域に正確に沿って重度の痛みが発現する,ウイルスが原因の急性の神経の炎症です。
眼のまわりの神経に最も多く発生しま す。
口の水泡形成の有無を診査する必要があります。
非定型性歯痛
神経障害性の歯の痛みのうち持続的 なものは外傷,歯の神経をとること,
簡単な抜歯や外科手術後の損傷 に伴って起こることがあります。
こ の時,歯がないのに歯の痛みを訴え る場合があり,
この状態を非定型歯痛と呼んでいます。
痛みは 持続性ですが,その原因となる所見 はなく,局所刺激に対する反応や神 経ブロックの効果もはっきりしませ ん。三環系抗うつ薬投与が有効とさ れています。
神経血管性の歯痛
片頭痛は歯の痛みとして感じられる痛みを引き起こすこと があります。
痛みはずきずきして 歯髄の痛みと似ています。
痛みの発作は一定の期間,一過性に生じま す。
心因性による歯痛
心因性の歯痛として身体表現性障害の疼痛性障害による歯痛です。
そしてもう一つは心因性の歯痛とはうつ病による歯痛です。